私の死後、遺産分割で妻や子供に手間をかけさせたくないので遺言書の作成を検討していたところ、家族信託にも遺言書と同じ役割があると知りました。どちらを選ぶべきか悩んでいます。(70代、男性)

遺産の行き先をあらかじめ指定する手段として遺言書が一般的ですが、近年、家族信託が利用されるケースも増えています。家族信託であれば、遺言書の機能に加え生前の財産管理についても決めておくことができます。

財産の名義人が認知症を発症した場合、たとえ家族であっても名義人の銀行口座からの出金が難しくなったり、名義人所有の不動産の売却やリフォームができなくなったりし、財産管理のために法定後見人の利用を求められる場合があります。しかし、委託者と受益者を名義人、受託者を例えば子供とした家族信託契約をあらかじめ締結しておけば、これらの行為は可能です。また家族信託であれば、相談者様に万が一のことがあった場合だけでなく、その後の相続を含めて先々の財産の行き先をあらかじめ指定できます。

ただし、ご自身の財産なのに、生きているうちに一切合切を子供に譲ってしまうわけではないのでご安心ください。家族信託の場合、財産の受益権はあなたに残ったままで受託者に与えられる権限は契約で制限されます。また、財産全てを委託する必要もありません。実際、不動産などの大きな財産のみ委託するケースが多いようです。

費用面では、遺言書は自筆または公正証書、専門家のサポートの有無によって最大で50万円程度、家族信託は信託する財産額にもよりますが35万~100万円程度です。生前に財産管理についても家族に託しておく必要がある場合は家族信託をご検討ください。相続に関するご相談は生活の窓口で承っております。

<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)平田純子>