妻を亡くした後、現在のパートナーと出会い一緒に暮らしています。将来の相続のことなどいろいろ考え法律婚ではなく事実婚を選びましたが、私の死後、財産の一部を残したいと思っています。(70代、男性)

将来、相続が発生した際、遺産分割協議における子供とパートナー双方の心理的ストレスに配慮し、パートナーとの事実婚を選ばれたのですね。年齢を重ねてからのパートナーとの関係について、同様の理由からあえて事実婚を選択するというケースは珍しくありません。

事実婚の相手には相続権がないため、パートナーの余生を資金面でサポートしたい、何らかの形で財産の一部を残したいという場合、生前の準備が必要です。準備には主に三つの方法があります。一つ目は遺言書による遺贈です。遺贈とは遺言により遺贈者の財産を無償で譲渡することで、遺贈の相手には法律上の制限はありませんが、他に相続人がいる場合は遺留分に配慮した遺言内容にしておかないと後々のトラブルの種となってしまいます。

二つ目は生命保険の活用で、死亡保険金の受取人に指定しておけば確実に財産を残せます。受取人の指定には一定の制約があることが一般的なので保険会社への事前確認が必要ですが、一時払いの終身保険に預貯金などの一部を移しておくという方法です。ただし、遺贈と生命保険のいずれの場合も、事実婚のパートナーには、法律婚の配偶者や相続人に適用される相続税の非課税枠がない上に相続税の2割加算の対象となる点も要注意です。

三つ目は、亡くなる前に財産の移転を行う生前贈与。年間の贈与額が110万円を超えると受贈者に贈与税の負担が生じます。いずれにせよ、あらかじめパートナーや子供と相談しておくことはトラブル回避のために不可欠です。生活の窓口では相続に関するご相談を承っています。

<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)平田純子>