つきあいのある銀行から遺言信託を勧められています。自分で遺言書を準備するのと何が違うのですか。また、最近よく耳にする家族信託というのは、遺言信託とは内容が異なりますか。(70代、男性)

遺言信託とは、一般的に、信託銀行などが遺言書作成の相談から、保管、そして遺言の執行までを一括で引き受けてくれるサービスのことを言います。特定の相続人と利害関係がない信託銀行が遺言執行者になることで、相続後のトラブルを防止したり、煩雑な手続きをお願いできたりするメリットがあります。何より遺言執行者を銀行という組織に依頼できる点は、長期的な視点で大きな安心です。

一方、費用が高額な点がデメリットで、銀行ごとに異なるものの、基本的に、遺産額に応じた料率(0.2~2%程度)が定められているほか、多くの銀行が最低報酬料金を設けていたり、別途、専門の士業業務への報酬に加え、各種手続きの実費がかかるので、その費用合計は数百万円のまとまった金額となります。遺言信託は、数億円程度の資産があり、相続人の構成がシンプルで少人数、安心感や相続人の負担軽減を重視したいケースに向いています。

遺言信託と同様の安心感を得つつ費用を抑えたい場合、個別に税理士や司法書士などを探す必要があります。サービス内容と費用の違いを念入りに比較し検討しましょう。

なお、家族信託とは、名義人が保有する金融資産や不動産を生前に契約を結んで子らに託し、契約の範囲内で管理・処分を任せることを言います。認知症対策の一つとして利用者が急増しています。家族信託のための契約を自分で行うことも可能ですが、法的な間違い漏れを防ぐために専門家のサポートを受けた方がよいでしょう。生活の窓口では相続対策に関するご相談を承っています。

<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)平田純子>