近所で高齢者の悲鳴 虐待疑うが

 近所のお宅から高齢者の悲鳴のような声や大きな音が聞こえてきます。虐待を疑っていますが、この目で確かに見たわけではありません。こんな時、隣人に何かできることはありますか。(60代、女性)

ためらわず地域の窓口へ通告を

 老老介護や、仕事と介護の両立からくる絶望感から、一般住宅内での高齢者への虐待件数が年々増えています。全体の件数からみれば、高齢者施設での虐待に関する相談や通報の方が多いものの、最近は家庭で起こる虐待に関するものが目立ってきています。

 明らかな虐待のケースとしては、暴力により相手に外傷を与える行為や、外部との接触を意図的に遮断するといった身体的虐待が多いですが、他にも暴言による心理的な虐待、介護放棄(ネグレクト)、要介護者の金銭を無断で使い込むといった経済的虐待なども増えています。

 家庭内での虐待事案の特徴は、介護者自身には虐待をしている認識がなく、第三者から見ても虐待と判断しにくいケースが多いことです。その数は実際の認知件数よりはるかに多いことが想像されます。

 ご近所で虐待が疑われるケースがあれば、まずは地域包括支援センターや各市町村の窓口(高齢者虐待防止担当窓口)に通告をお願いします。どのお宅でどんなことが起きているかを詳細に伝えましょう。事実の確認のため担当者が訪問などを行い、必要に応じて高齢者の保護や要介護者の支援を行います。

 通告は「匿名」で行うことが可能で、通告した方や通告内容など個人が特定される情報は漏らしてはならないと規定されているため、何かおかしいと感じたら、ためらわずに通報しましょう。

 虐待は夜間や休日にも発生します。窓口が閉まっている時間帯に虐待現場を目撃した場合は、迷わず警察へ通報しましょう。<生活の窓口相談員(看護師)金石憘栄(きえい)>