自宅に独居 死後事務を売却益で

 マンションで1人暮らしをしています。遠方に親族はいるものの、両親を亡くしており、子もいません。死後は、誰かにマンションの売却をお願いし、そのお金で諸手続きを引き受けてもらいたいのですが、可能でしょうか。(80代、女性)

事前の所有権移転がお勧め

 亡くなった後に迷惑をかけたくないという気持ちは、相談に来る方の多くが抱いています。おひとりさまにとって、葬儀や納骨、生前の電気や水道などの契約の解約手続きなど、いわゆる「死後事務」と呼ばれる作業は、知人や業者にお願いするのが一般的です。死後に財産を処分し、売却益から経費を差し引いた残額をNPOなどに寄付するような遺贈方法を「清算型遺贈」と言います。

 遺言執行者を指定すれば、マンションの売却や登記手続きなどを単独で済ませることができるので負担が少なくて済みます。遺言執行者は、誰でもなることができます。

 ただし、ご希望のように死後に全てを委ねるとなると、マンションを売却できなかった時や、売却までの管理費や修繕積立金の支払い、売却時の譲渡所得税の支払いなどの負担が生じます。一般的には、必要経費分を事前に預託金として預けます。

 中には死後の遺贈を条件に安い料金を設定している死後事務サービスの業者もいますが、サービス内容に見合った料金なのか不明瞭なケースもあり、あまりお勧めできません。

 最近、所有者の死後に引き受け手のないマンションが発生する「遺品部屋」の問題もクローズアップされています。死後に迷惑をかけないためにも、事前に所有権を移しておくことをお勧めします。たとえば、業者に自宅を売却した後、賃料を支払って住み続ける「リースバック」という契約形態があります。預貯金で財産を保有しておけば、支払いや遺贈が円滑に進みます。「生活の窓口」では、おひとりさまの終活に関する相談も承っております。<生活の窓口相談員(統括マネジャー)山本建>