贈与と相続 今年の変更は?

 2024年から贈与・相続の制度が変わると聞きました。私自身はまだ心身ともに健康ですが、子や孫に財産を上手に残すために気をつけなければならないことを教えてください。(70代、男性)

「相続時精算」で早めの承継促進

 相続税制は毎年のように改正されますが、今回の改正は生前贈与の枠組みを「暦年課税」から「相続時精算課税」に転換させたものと、後年評価されることでしょう。

 暦年課税は年間110万円まで非課税枠が設けられていますが、相続時にこの合計額を一定期間さかのぼって相続財産に持ち戻します。この持ち戻し期間はこれまで相続開始前3年以内でしたが、来年から7年以内に4年間延長されます。

 親が健康状態に不安を感じてから相続対策を始める多くのケースでは、相続開始前7年を超えて、まとまった金額を暦年贈与で子や孫に渡すことは困難と思われます。実質的に、相続時精算課税の利用を促進することになると言われています。

 相続時精算課税制度の概要と利用にあたっての留意点を説明します。

 まず累計2500万円まで贈与税がかからずに生前贈与できる一方、相続時にその贈与分が相続財産に合算されて相続税が計算されます。暦年課税と同様、年間110万円までは贈与税も相続税もかかりません。

 この制度は、親世代からの早めの資産承継を促し、相続時にまとめて課税するというもので、欧米でも採用されています。親世代が子や孫の贈与税の負担を気にせずに資産承継できるメリットがあります。

 一方、生前贈与の金額が累計2500万円を超える場合や年間110万円を超える場合には、都度、贈与税の申告が必要になります。また一度、相続時精算課税を選択すると、同じ間柄の贈与ではこの制度しか使えなくなります。

 「生活の窓口」では相続の相談も承っております。<生活の窓口相談員(統括マネジャー)山本建>