母の自宅売却 クーリングオフは?

 70代の母が古い戸建てに1人で暮らしています。段差で転倒することを恐れて、マンションに住み替えたいようです。不利な条件と気付かずに自宅の売却契約を結んでしまった場合、クーリングオフはできますか。(40代、男性)

対象外、1人での契約を避けて

 クーリングオフ制度は消費者保護の目的で、売り主が業者、買い主が一般の消費者である場合に適用される仕組みです。相談のケースは、お母様が売り主ですのでクーリングオフはできません。高齢により、契約内容の理解が不十分なまま安価で自宅の売買契約を結んでしまったとしても、契約解除を申し出る場合は、違約金を支払うことになります。

 売り主から申し出る場合は、買い主から受け取った手付金の倍額を買い主に支払うことで契約を解除できます。買い主が残余代金の支払いを完了するなどしていれば、解除を申し出ることができません。

 不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)を取得すれば、所有者の氏名や住所は分かるので、不意に売却の勧誘をされないとも限りません。偶然にも住み替えたいタイミングであれば、とんとん拍子で売却契約を結んでしまうこともあるでしょう。住み替え物件を紹介する条件で話が進み、その場で手付金を渡されると、思わず契約書に署名、押印してしまうこともあり得ます。1人で対応しないように警戒を促しましょう。

 認知症の影響で判断能力がない人が売買契約をすれば、契約自体が無効になる可能性があります。ただし氏名、住所、生年月日などの本人確認ができて、売却意思を示す能力があれば、残余代金支払いや物件引き渡しに立ち会う司法書士の判断で契約が有効となる可能性があります。

 このように認知機能が衰えてきたお年寄りが結ぶ契約は不安定になりがちですので、ご注意ください。

 この制度は、親世代からの早めの資産承継を促し、相続時にまとめて課税するというもので、欧米でも採用されています。親世代が子や孫の贈与税の負担を気にせずに資産承継できるメリットがあります。

 「生活の窓口」では、認知症対策の相談も承っています。<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)長沼満美愛>