相続した土地 売却急ぐ娘に困惑

 夫から相続した土地を、長女が売ろうとしています。権利証や印鑑を渡してしまっています。「売りたくない」と伝えたいのですが、電話に出てくれません。おいから「買い手が見つかったようだ」と聞かされ、焦っています。(90代、女性)

来月から相続登記義務化 過料も

 建築基準法では、敷地に建物を建てる場合、道路に2㍍以上接していなければならないという「接道義務」が定められています。お話をうかがうと、相続された土地は分筆によって、この接道義務を満たしていない状態となっているようですね。

 満たしていない場合、建物を建てることができません。あなたが所有している土地はこのままでは買い手がつかないでしょう。しかし道路に接している土地と一緒に売りに出せば、買い手がつきやすくなります。

 長女は、接道義務を満たしているおいの土地と一緒に売却しようとしていると思われます。おいは、あなたと長女が合意の上で売却話を進めていると思い、進捗(しんちょく)状況を知らせてくれたのではないでしょうか。

 長女が売却を急ぐ背景には、相続登記が義務化される今年4月の改正不動産登記法などの施行があると思われます。相続時に不動産の相続人に登記を義務づけ、正当な理由がないのに相続登記をしない場合は、10万円以下の過料が科される可能性があります。このため、相続前に不動産を処分しておきたいという相談が増えています。長女もこのことを気にかけたのだと思われます。

 不動産の売却には所有者と登記名義人が一致していることや、境界線が確定していることなど事前の準備が必要です。長女が進める売却話に協力する場合は、これらの点について確認しておきましょう。

 不動産売買は相対の取引ですので時間がかかります。売却する場合は、速やかに手続きを進める必要があります。「生活の窓口」では相続の相談も承っております。<生活の窓口相談員(統括マネジャー)山本建>