2022年4月の改正法施行で希望者は年金の受給開始年齢を70歳から75歳に引き上げることが可能になります。1952年4月2日以後に生まれた人が対象で最大84%増額になります。増額率は「繰り下げ月数×0.7%」となり、申し出た月に応じて一生涯増額となります。同年4月1日以前に生まれた人は法改正の内容は適用されません。

 繰り下げ受給を申し出る場合は、年金請求に「老齢基礎年金・老齢厚生年金 支給繰下げ申出書」を添付して、66歳の誕生日の前日以降に提出します。老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げができます。

 老齢年金を繰り下げる場合に注意すべき六つのポイントを確認しましょう。

 ①既に遺族年金や障害年金の受給権がある人は繰り下げることができません。ただし、障害基礎年金のみの受給権がある人は老齢厚生年金を繰り下げることができます。

 ②第1号被保険者が任意で付加年金に加入していた場合は、老齢基礎年金とセットで付加年金を繰り下げることができます。増額率も同一です。付加年金のみ繰り下げることはできません。

 ③扶養する配偶者や子供の年齢などを条件に、老齢厚生年金とセットで加給年金が受け取れます。老齢厚生年金を繰り下げている場合は、その繰り下げ待機期間中は加給年金が支給されません。なお、繰り下げた加給年金は増額されません。

 ④配偶者が65歳になると受給している加給年金は打ち切られます。代わって、配偶者の老齢基礎年金とセットで振り替え加算が受け取れます。配偶者が老齢基礎年金を繰り下げている場合は、その繰り下げ待機期間中は振り替え加算が支給されません。なお、繰り下げた振り替え加算は増額されません。

 ⑤年金を受給しながら厚生年金に加入して働く場合は、年金額が減額される在職老齢年金の仕組みがあります。繰り下げた場合は、その仕組みにより減額された後の年金額に、増額率が適用されます。繰り下げ受給の時点で働いていない場合でも、減額自体をさかのぼって免れることはありません。

 ⑥繰り下げ手続き前に亡くなった場合に一定の遺族に支払われる年金額は、65歳にさかのぼって計算されるため、増額されません。

<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)長沼満美愛>