個人型確定拠出年金(イデコ)の今年の三つの制度改正について、実施月ごとに解説します。

 ①【4月】受給開始時期の上限年齢が、70→75歳までに引き上げられました。公的年金の繰り下げ受給においても同様の改正があり、受給開始年齢が75歳までに引き上げられましたのでそろえたのでしょう。
 イデコの通算掛け金拠出年数が10年以上の場合は60~75歳の間で受給開始時期を加入者が自由に設定できます。8年以上の場合は61~75歳となり、6年以上の場合は62~75歳という規則性に従って、受給開始のタイミングが1年ずつ遅れます。

 ②【5月】加入可能年齢が、公的年金の被保険者であることを条件として、60→65歳未満に拡大されます。人生100年時代ですから積立期間が60歳までに終了するのは時代錯誤なのでしょう。
 会社員や公務員などの場合は、第2号被保険者として60歳以降も働く場合に限ります。また、自営業者や専業主婦(夫)などの第2号被保険者以外は、60歳以降も国民年金に任意加入する場合に限ります。国民年金の任意加入被保険者とは、60歳までに老齢基礎年金の受給資格を満たしていない者や満額受給できない者、年金額を増額したい者などです。なお、国民年金に任意加入している海外居住者もイデコに加入できるようになります。

 ③【10月】企業型確定拠出年金とイデコの同時加入要件が緩和されます。企業型確定拠出年金を導入している企業の従業員は、企業型確定拠出年金の規約にイデコにも加入できる旨が規定されており、事業主の拠出上限額を引き下げている場合に限ってイデコとの同時加入が認められています。
 この改正により、規約の有無に関わらず従業員の意向でイデコに加入できるようになります。また、企業型確定拠出年金のマッチング拠出を認めている企業においても、イデコに加入することを選択できるようになります。マッチング拠出とは、事業主の掛け金に上乗せして従業員が掛け金を拠出する方法ですが、事業主の掛け金額を超えてはならないルールがあるため、イデコの加入を選択したいと考える従業員は多くなると予想します。

<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)長沼満美愛>