湘南の海が近いので、休みにはボードを持って浜辺に行く。「波に乗る」というより「海に乗る」という感覚だ。

 大学時代までは関心がなかったが、40歳になって生まれ故郷に戻り「せっかくなら」と始めたのがボディーボードだ。こぢんまりとしたウレタン製のボードに腹ばいになって、サーフィンと同じように波に乗る。腹ばいのスタイルだから、ボードに立って乗るサーフィンよりも体感スピードは速く、うまく乗れた際に目の前数センチで海水を切っている感じは格別だ。

 夏は水着で、冬もドライスーツに身を包み、いそいそと出かける。気温が10度を下回るようだと、行き帰りは寒いけれど、海に入ると温かい。海水温のほうが高いのだ。

 そんな波待ち(ほどよい波がやってくるのを海に浮かんで待つこと)の時ほど「海に乗っている」と感じる。快晴の中、えも言われぬ爽快感だ。

 そして。「これだ」と見える波が沖に見える。サーファーもボーダー(ボディーボーダー)も競って波を捕まえに沖に行く。湘南の海はいつでも混んでいるので、ひとつの波に大勢が一斉に乗るのだが、本来は、最初に波に乗った(捕まえた)人に優先権があり、他のサーファー、ボーダーは乗ってはいけないのがルール。勢いがつくのでぶつかるとかなり危険なのだ。

 なんとか波を捕まえて、砕ける前に横に滑っていく。砕けにくい波だと結構な距離を「横滑り」できるので、これも爽快だ。

 休日の浜辺は、若い男女のサーファーが多いのはもちろんだが、50~70代のサーファー、ボーダーも結構目に付く。たいてい、ひとりで海に来て黙々と波乗りを楽しみ、満足すると引き上げていく。練習中の高齢サーファーもいる。20~30年前に比べると、明らかに年齢層が上がっていると感じる。それだけアクティブな中高年が増えたということなのだろう。素晴らしい。

 かく言う私もこの層で、無理はしないが、若い人と一緒に海に入っていると刺激を受ける。それだけでも楽しい時間だ。果敢に波と格闘するかのような乗り方は、見ていて力が入るし「私も挑戦してみよう」と思えるのだ。

 1時間ほど波と遊んで帰ると、結構な疲労感に襲われるのだが、それも心地よい疲れ。夜のビールがおいしくなる。【さ】