相続に関する民法の規定が大きく変わるといわれています。夫婦で購入した持ち家がある場合、相続時に気を付けることを教えてください。(女性、70代)

民法改正により配偶者居住権、配偶者短期居住権という権利が創設されました(2020年4月1日施行)。相続開始の時、夫と同居していた配偶者は最低でも6カ月間、無償で自宅に住み続けられます。また、遺言などにより配偶者居住権を取得すれば、生涯自宅に無償で住み続けることができます。

夫の死後、自宅の居住権を妻が、所有権を子が取得したとします。居住権は相続税評価が低いため、妻の現金などの相続分を増やすことができます。一方、配偶者居住権が認められた場合、相続した家の固定資産税の納税義務者は子です。売却する際も妻の居住権は消失しません。売りたくても売れなくなるというリスクも心得ておきましょう。

改正民法の施行前に相続が発生する場合、配偶者居住権や配偶者短期居住権は取得できず、配偶者は基本的に所有権を相続しなければ住み続けることができません。小規模宅地の特例(夫所有の自宅を妻が相続すれば、土地の相続税評価額は2割になる)や非課税枠(妻には1億6000万円まで相続税は非課税)の活用、また、生前贈与の特例(婚姻期間が20年以上の場合、妻に自宅を生前贈与しても最高2000万円まで贈与税がかからない)なども検討できます。(生活の窓口)