夫とは死別し、40代の一人息子とは折り合いが悪く、長らく音信不通です。数年前に老後の備えと思い、都心の借地に賃貸マンションを建てました。私に何かあれば息子が相続しますが、散財しないか不安です。(70代、女性)

息子さんがせっかく入学した一流大学を中退し、非正規のお仕事を転々とされているそうですね。息子さんが生活に困らないように財産を残してやりたいと思いつつ、一時に大きな財産を手に入れたら派手な暮らしをしてしまい、使い切ってしまうのではないかと案ずるお気持ちはよく分かります。

一つの方法として、信託のスキームを使うのはいかがでしょうか。受託者、受益者をあらかじめ決めて契約で財産の活用方法や処分方法を決めることができますので、万が一の場合にも安心です。相談者の方はほかに身寄りがないということですので音信不通の息子さんが受託者になることは考えにくく、家族信託は困難です。商事信託を検討してみてはいかがでしょうか。

信託会社は受託者として財産を託され、その利益を受益者である息子さんに還元します。今回は賃貸マンションを残したまま、賃料収入を息子さんに月々支払うスキーム、不動産の管理信託が妥当です。

受益者は利益を受けるだけとはいえ、権利を放棄することができるので息子さんの同意が必要です。まずは連絡を取る必要があるでしょう。次に、長く管理するのに耐える構造や耐震基準、防火基準を満たす必要があり、改修を迫られる場合もあります。今回のケースでは敷地が借地なので、信託契約の前提として借地権の登記をし、名義を信託会社に変更する必要があります。名義変更には土地所有者の承諾が必要で費用負担が発生します。手続きはプロに任せると安心です。相続に関するご相談は生活の窓口で承っております。

【生活の窓口相談員(統括マネジャー)山本建】