夫婦2人で郊外の持ち家に住んでいますが、買い物や病院に行くにも距離がある上、妻の介護も体力的にきつくなってきました。今後のことを考え、娘の自宅近くに住み替えた方がよいのではと考え始めています。(70代、男性)

シニアの住み替えで最も注意を払う必要があるのが資金計画で、基本的に、現在の持ち家の売却益の範囲で計画を立てるのが望ましいです。

特に、戸建てから分譲マンションへの住み替えは、戸建てでは必要のなかった管理費や修繕積立金といった継続コストの負担増に注意が必要です。例えば、住み替え後の分譲マンションの管理費及び修繕積立金が月々3万円とすると、戸建てからの増額コストは20年間で720万円になります。自宅の売却益が3000万円として、仲介手数料や諸費用も考慮すると、住み替え後の物件そのものに投じられる資金は2000万円程度が現実的でしょう。中古マンションの場合、修繕費用負担のさらなる増額を求められることも珍しくはありません。

賃貸アパートに住み替える場合も、生涯の家賃と更新料の総額で考えなければなりません。自宅売却益が3000万円の例で計算してみると、この先20年間住むと想定した場合、月額家賃は10万円程度が妥当です。高齢者への賃貸物件の貸し渋り問題も気がかりです。そして、将来、高齢者施設などへの入所の可能性を考慮すると、住み替えの資金計画はより慎重に行う必要があります。

資金面以外にも、郊外戸建てと都市部の集合住宅とでは、騒音や風通しの悪さに加え、両隣や上下の住人と接近した居住環境ならではの音やにおいのトラブルなども想定されます。年齢を重ねてからの住環境の大きな変化がもたらす精神面や健康面への影響や負担増も心配です。住み替えのご相談も承っています。

<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)平田純子>