東京都内の実家マンションで要支援2の80代後半の父親を3歳下の母親が老老介護しています。マンションは両親の共有名義です。預貯金が少なく、父親の認知機能が衰えていて、いざという時が心配です。(50代、女性)

相談者にも余裕資産がないとのことですね。ご両親の高齢者施設への入居などで介護費用がかさむようになると、実家マンションの売却で充てることになると思います。所有者の一人であるお父様が認知症になると売却できなくなり、資金的な手当てが難しくなってしまいます。

最初に考えられるのは、お父様を委託者兼受益者、相談者を受託者とする家族信託を組み、お父様の持ち分所有権を相談者に移転してお父様の認知症に備えることです。家族信託は、後見制度と異なりランニングコストがかからない認知症対策として近年急速に普及していますが、昔かたぎの人には契約を家族関係に持ち込むことに抵抗感を覚えることが多いようです。そこで、次善の策としてお母様に持ち分を譲渡して所有権者を1人にしておくことが考えられます。一定期間婚姻生活を送った配偶者への居住用不動産の譲渡には贈与税に関して特例の控除枠が設けられており、安心です。お父様の認知症対策としてはそれなりに有効です。

しかし、ご両親はともに80代であることから、いずれお母様にも認知症の不安がよぎります。であれば、いったんマンションを売却してリース料を払って住み続けるリースバックも一案です。不動産所有よりも現金のほうが何かと融通が利きます。住む期間が長くなればリース料の支払いで売却益を食い潰してしまって意味がありませんので、介護費用が大きくかかりそうな時期を考慮に入れながら検討することになります。生活の窓口では、認知症対策に関するご相談も承っております。

【生活の窓口相談員(統括マネジャー)山本建】