夫が亡くなり十数年たち、自身の仕事のリタイアを機に、英国在住の娘の近くでの余生を検討中です。移住前に自宅マンションは売却すべきでしょうか。移住先で死亡した場合の相続税についても気になります。(70代、女性)

緊急時に頼れる人が身近にいないと困りますね。娘さんの近くで暮らすほうが今後何かと安心ですし、過去に英国での居住経験があるなら、現地での生活になじむことは比較的容易かもしれません。

しかし、年齢を重ねてからの日常生活の大きな変化は、想定外に心身への負担が大きいです。過去に英国での滞在経験があっても、その後の日本暮らしが長く、友人が多くいらっしゃるのであれば、今回の移住計画は少し慎重に検討されたほうがよいでしょう。

できれば、娘さんの協力を得ながら現地での生活を数カ月以上試してみましょう。生涯暮らすことに心身共に確信が持てる時までご自宅については売却を待ったほうがよいでしょう。いざという時、再び戻れる住居があることは大きな安心です。

海外に1年以上居住しながら日本の不動産を売却する場合、手続きが複雑になるため不動産会社や司法書士のサポートを受ける必要があります。売却で得た所得は課税の対象で、確定申告も必要です。なお、所定の手続きが必要ですが、海外移住をしても日本の公的年金を現地の銀行口座で受け取ることが可能です。

海外移住した場合の相続税に関してですが、日本国籍を有する相続人、または被相続人が相続開始前10年以内に日本に住んでいた場合には、国内居住者と同様の扱いとなり、国内外すべての相続財産が課税の対象です。そして、両方が海外移住後10年経過している場合においても、国内の相続財産は課税の対象となります。生活の窓口では、不動産や相続に関するご相談を承っています。

<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)平田純子>