父が自身の亡き後の相続財産を減らそうとしているのか親族名義の口座や貸金庫に現金を移しており、預金残高が激減しています。その不毛な行動を制しても理解してもらえず悩んでいます。(50代、男性)
お父様は、銀行口座から現金を引き出しておけば相続税を回避できると考えているのですね。銀行口座から目的なく引き出されたお金については、亡くなる前数年間の入出金と送金履歴を調べた上で、相続財産に適正に算入します。なのでATMに通ってお金を移動させる行為は無駄な骨折りになってしまいます。
お父様の過去の収入などから推定する遺産額と実際に提出した申告内容が乖離(かいり)している場合は、名義預金やタンス預金などの可能性を疑って、税務署は銀行などに照会します。税務署の調査は親族名義の預貯金や財産まで及ぶため説明がつかないお金の移動は指摘されます。
名義預金は相続税の対象になることを知らない人が多いため、しばしば申告漏れを指摘されます。例えば、お母様の預金残高がそのご両親などからの相続遺贈財産と独身時代の財産、年金収入などの合算額と比べて過大であれば、名義預金と疑われます。子や孫名義の口座において贈与契約が成立していない場合は名義預金とされます。通帳や印鑑はあくまで口座名義人が管理しましょう。
名義預金やタンス預金は、税務調査が入る前に現預金として相続財産に含めて適正な申告をすれば問題ありませんが、税務調査後に修正申告をすれば、延滞税と過少申告加算税または重加算税などが生じます。相続人の立場で今からできることは、口座名義人(=推定相続人)から銀行に取引履歴の開示請求をして、不明な入金の資金源を把握することぐらいです。生活の窓口では相続に関するご相談も承っております。
<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)長沼満美愛>