父の相続で衝突した姉が母を囲い込んでいます。私のことをあしざまに言う姉の話を聞かされている母は会ってくれません。姉の入れ知恵で遺言が作成されているため、母の死も財産も隠されそうです。(60代、男性)

母の死も知らされないまま、遺言の内容通りに姉が受遺者として相続手続きを済ませるのではと疑心を抱いているのですね。おそらくお母様の遺言を実行する者として遺言の中でお姉様を遺言執行者に指定しているでしょう。ただし、民法では、お母様が亡くなりますと遺言執行者はその職に就くことを承諾する旨の「就任通知書」と遺言のコピーを全相続人に送付しなければなりません。

通常、遺言には相続財産の目録があるため、財産を隠されるといった心配は無用です。「全ての財産を相続させる」旨の遺言で目録がなかったとしても、遺言執行者は相続財産になる不動産の全部事項証明書や預貯金の残高証明書を取得して全相続人に開示する義務を負います。仮にお姉様がこれらを送付せずに遺言を執行した場合、あなたは発生した損害を賠償請求できます。

懸念されるのは、あなたが相続人から廃除されて相続権を失うことでしょうか。民法では、被相続人に虐待や重大な侮辱を加えたり、著しい非行をしたりした推定相続人を生前に廃除することができます。遺言で廃除すれば、遺言執行者が代わって家庭裁判所に請求します。

ただ、家裁は事由の有無について裏付けとなる具体的な悪質行為が遺言に明記されている場合を除いて廃除と認めないことが多いです。相談のように単に伝聞の情報だけで認められることはないものと思われます。なお、廃除が認められるとあなたの遺留分は剝奪されますが、代襲相続の適用により、あなたの子は侵害された遺留分を請求できます。

<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)長沼満美愛>