1人暮らしの母親の体調が思わしくなく、相続のことを考え始めました。地方の実家を法定相続人である兄弟と3人で相続することになりそうですが、私は必要ありません。留意点をお聞かせください。(60代、女性)
まず注意していただきたいのは、相続不動産の共有はできるだけ避けた方がいいということです。誰かが反対したり、認知症になったりすると不動産の処分が難しくなるためです。ご兄弟に不動産を譲り、取り分が少なくなっても金融資産を相続しましょう。
相続にかかわるさまざまな手続きが煩わしいのであれば、相続を知った時から3カ月以内に相続放棄を家庭裁判所に申述できます。この場合、一切の遺産を相続できなくなる点をご理解ください。
しかし、他のご兄弟も相続放棄することが考えられます。この場合、実家の管理責任だけは3人で負担することになるので相続放棄の手続きと相続財産管理人を選任して管理するための費用の負担が発生します。
こうした負担を解消するために、今年4月から相続した土地の国庫帰属制度が始まります。相続人は申請時に審査手数料を、承認時に10年間の保管料(負担金)を国に支払います。法務省によると、土地の種類や大きさなどにより異なりますが、市街化区域で200平方メートルの宅地は約80万円程度になるようです。
国は、国庫に帰属できる土地の要件を定めています。建物が建っていないことや権利が設定されていないことなどのほか、樹木など管理に支障のあるものがないことなどを挙げており、基本的に更地にすることになりそうです。
国に支払う10年間の保管料と更地にするための建物の解体費、植木の撤去費用などの合計と所有した場合に継続的にかかる費用を比べて判断しましょう。
【生活の窓口相談員(統括マネジャー)山本建】