地方の分譲住宅に住む母親の物忘れがひどくなって認知症が心配です。父親は他界し、母親は私が最期までお世話したいと思っています。いまできることについて教えてください。(50代、女性)

お母様を安心してサポートするためにもお金の心配はできれば解決しておきたいですね。現預金が少ないとのことですので、お母様が認知症と確定診断されると実家の処分が難しくなり、いざという時のお金を作ることができなくなってしまうので困ります。

家族信託という方法がありますが、仕組みをお母様に理解してもらうのにはひと苦労です。時間が惜しい場合には相続時精算課税制度を使って一足先に実家の所有権をあなたに移してしまうのも一案です。

相続時精算課税制度は、2500万円までの生前贈与への贈与税を非課税とする代わりに、相続時の相続財産に、過去の生前贈与分を加えて相続税を課税する制度です。いずれ課税される点で節税にはなりにくいですが、そもそも生前贈与する財産額が相続税の基礎控除に収まる程度であれば先に不動産の所有者を子世代に移転できるので認知症対策としては有効です。今国会で制度改正が審議中で、いくつかの優遇制度が設けられそうです。ただし、いったん適用を受けると小規模宅地の特例が使えなくなることに注意が必要です。

地方の分譲住宅であれば相続税の基礎控除枠に収まる可能性が高く、ほかに注意すべき点はないと思われますので積極的に利用すべきケースだといえます。なお贈与額が110万円を超える場合、贈与税の申告が必要です。ご自身でも可能ですが、間違いのないよう税理士に相談することをお勧めします。

生活の窓口では、相続のご相談を承っています。

【生活の窓口相談員(統括マネジャー)山本建】