2500万円まで贈与税が発生しない贈与の制度があるとききました。長男にアパートを贈与して賃貸経営を早めに任せた方が良いのか悩んでいます。制度の概要を教えてください。(70代、男性)

長男になるべく早くアパートを贈与して、賃料収入を次世代が得るスキームの構築は相続対策として有効です。累積贈与額2500万円までは贈与税が発生しない相続時精算課税制度を活用すると良いでしょう。2500万円を超えた贈与分については一律20%の税率で贈与税が課されます。

同制度により、生前贈与されたアパートなどは、あなたが亡くなった時に贈与時点の時価評価で相続財産に持ち戻されて相続税の対象になります。納めた贈与税は相続税から控除または還付されるため、贈与税の納め損が生じることはありません。贈与者ごとに利用できる制度であるため、例えば、長男が父と母のおのおのにおいて相続時精算課税選択届出書を出すことにより最大5000万円までの生前贈与について贈与税が発生しません。

これまでは精算課税制度を利用しても、最終的に支払う贈与税と相続税との合計が同じであるため節税にはならないと敬遠されてきました。ただし、法改正により2024年以降に受ける贈与から同制度の利用が広がりそうです。同制度で受贈した財産にも暦年課税の基礎控除と同様に毎年110万円までの非課税枠が設けられることがその主な理由です。複数の贈与者と精算課税制度を利用する場合、この非課税枠が贈与額で案分して適用されます。なお、年間110万円までの贈与は相続時に持ち戻されないことが大きな魅力です。暦年課税では、死亡前7年分の一定受贈財産が相続財産に持ち戻されるため、暦年課税から精算課税選択にシフトするでしょう。

<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)長沼満美愛>