父親が過日亡くなり、唯一の相続人である私が実家のほか、山林や農地を相続しました。山林、農地は利用しないので売却するか国庫帰属制度を利用して国に譲渡したいと考えています。留意点はありますか。(50代、女性)

間伐など高いハードルに注意を

使う予定のない山林や農地を相続してその処理に困るケースは多いです。農地は所在地の農業委員会などに相談するのが一番ですが、山林や雑種地の場合、どこに相談していいか分からずに時間だけ過ぎていく、といったケースも多いです。

そこで、今月27日にスタートする相続土地の国庫帰属制度の利用という選択肢があります。所在地の法務局に相談して承認が得られれば、10年間の保管料を支払って所有権を移転します。保管料がいくらになるかは調査によって決定されますが、算定方法は法務省のサイトでご確認ください。

悩ましいのは、承認のための条件が定められていてハードルが高いということです。例えば、山林が人工林の場合、枝打ちや間伐などの手入れをしておく必要があります。雑種地などでも廃液の漏出や廃屋があれば撤去する必要があります。法務局の話では、保管料との兼ね合いで過分の費用が発生するおそれがあると承認されないようです。

なお、今回のケースにはあてはまりませんが、相続土地が共有されている場合、全員による共同申請が必要です。共有者のうち1人でも反対している場合、国庫帰属の申請は難しいです。民法改正で共有者が所在不明である場合は相続から10年でほかの共有者が譲渡権限を持つことができることになり、国庫帰属の申請もすることが可能となりますが、反対しているだけの場合には適用できません。相続対策には事前の準備が大切です。生活の窓口では、相続に関するご相談を承っております。

<生活の窓口相談員(統括マネジャー)山本建>