亡き祖父所有の土地に80代の母が住んでいます。母の兄弟姉妹は認知症になっていたり、死亡していたり、疎遠であったりと複雑な事情があるため、登記申請をする母が途中で投げ出さないか心配です。(50代、女性)

手続き容易 暫定的な申告を

不動産登記法の一部改正により2024年4月1日から相続登記が義務付けられることとなりました。このため、あなたと同様に困り果てて窓口に相談される方がいらっしゃいます。義務化の施行を1年後に控え、体力も気力も理解力も必要になる手続きが高齢者にとってストレスになるようです。

施行日前に発生した相続についても27年3月末までに相続登記を行う必要がありますが、認知症の相続人がいると、遺産分割協議をする上で手続きの負担が増します。そこで、お母様の氏名や住所などを登記官に申し出ることにより、申請義務の履行とされ、10万円以下の過料制裁の対象にはならない相続人申告登記制度が新設されました。

登記簿上の所有者が死亡したため相続開始となったこと、戸籍謄本などの提出により自らが相続人のうちの1人であることを登記官に申し出ることで、申し出た相続人の氏名や住所などが所有権の登記に付記されます。全相続人の戸籍などを収集する必要がないため、高齢のお母様でも自ら手続きできそうですね。ただし、分割協議を終えていないので所有権の取得まで登記されず、暫定的な手続きという位置付けです。

したがって子世代のあなたがいつか煩雑な手続きを完了させることになるでしょう。ある程度は必要経費とわりきって早めに司法書士などの専門家に相続登記の手続きを任せた方がかえって費用を抑えられます。相続のご相談は、生活の窓口で承っています。お電話やメール、ウェブ会議システム「Zoom」でも対応しております。

<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)長沼満美愛>