私が亡くなった後、配偶者の余生に必要な生活資金を確保した残りの財産は、社会貢献している法人などへの寄付を検討しています。その手法や注意点、寄付先に生じる納税負担などについて教えてください。(70代、男性)

遺言による現金寄付がお勧め

相続財産をご自身の価値観に合った活動をしているNPOやNGO、大学などに寄付したいというご相談が増えています。相続財産の寄付には、相続人がいったん受け取って寄付する方法、遺言で直接寄付する方法(遺贈)があり、税金の取り扱いや寄付先の制限などが異なります。

前者は、相続発生後に遺産分割協議を経て相続人が相続財産の一部を寄付します。相続税の申告期限までに寄付することを条件に寄付した財産の相続税が非課税となります。ただし、寄付は相続した財産そのものでする必要があります。寄付先は国や地方公共団体、特定の公益法人に限られ、相続税の申告には文部科学省が発行する「相続税非課税対象法人の証明書」が必要です。

後者の場合、基本的に自由に寄付先の法人を指定できます。ただし、寄付先に現金を遺贈した場合、法人の利益とみなされ法人税が課せられるケースがあります。個人が対象の相続税は課されません。遺贈する財産が不動産や株式の場合、さらにややこしくなります。あなたから寄付先に時価で譲渡があったとみなされて譲渡所得税が課税され、準確定申告の手間や納税の負担が寄付先またはあなたの配偶者に生じることになりますので、避けた方がよいでしょう。

お勧めの寄付方法は、遺言による現金の寄付です。相続発生後のトラブル回避のために、あらかじめ家族の理解を得ておいたほうがいいでしょう。寄付先にも受け入れ可否や手続きなどを問い合わせておくとスムーズです。生活の窓口では、相続に関するご相談を承っています。

<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)平田純子>