自宅の承継 長男、嫁、長女の順に

 同居中の長男夫婦には子がいません。私と妻の亡き後、長男に自宅を相続させて嫁にも最期まで住んでほしいです。嫁亡き後は私の長女に承継させたいのですが、遺言を作成しておけばよいですか。(70代、男性)

「受益者連続型信託」なら指定可能

 遺言により財産の承継先を指定できるのは所有者のみです。2次相続以降の承継先は指定できません。ご相談の内容を遺言で実現させたいならば、長男の妻(嫁)にお願いしてあなたの長女に「遺贈する」旨の遺言を書いてもらう必要があります。

 あるいは配偶者居住権を長男から嫁へ遺贈する方法もあります。長男があなたの自宅を相続した後に亡くなれば、嫁に配偶者居住権が認められるため、終生無償で住むことができます。配偶者居住権はその対象者が亡くなった時点で消滅するため、所有権を持つ長女が最後は自由に売却して代金を得ることができるようになります。ただし、いずれにしても現時点では、長男夫婦にあなたの考えを伝えることはできますが、それぞれが作成する遺言の内容を強制できません。

 そこで、受益者連続型信託という方法があります。受益者を死亡により順に変更して信託契約を続けるタイプです。あなたが委託者兼受益者になります。2次受益者を妻、3次受益者を長男、4次受益者を嫁、帰属権利者(受託者)を長女とした内容で家族信託契約を締結します。

 受益者と受託者とが同一人物になると信託が終了するため、受託者を長女に指定するとよいです。契約期間が30年という制限はありますが、受益権の承継先を何世代も先まで指定できることに加えて、残余財産の帰属先を指定できます。

 念のため、受益権は相続財産ですので、相続で新たな受益者に相続税が課されることも承知しておきましょう。家族信託のご相談も生活の窓口で承っております。<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)長沼満美愛>