土地の国庫帰属制度 利用を断念

 父親が畑にしようと買った地方の造成地を相続し、国庫帰属制度を利用するため管轄の法務局とやりとりしていましたが、負担の重さに耐えきれず申請を取り下げました。辛抱が足りないですか。(50代、女性)

重い負担と少ない承認が課題に

 1年ほど前、国庫帰属制度が始まったころにご相談いただいた方ですね。いろいろな事情があると思いますので、取り下げるというのも一つの選択肢だと思います。実際、国庫帰属制度については審査の負担が重い上に承認されるケースが少ないことが課題となっています。承認されるかどうか分からないのに負担ばかりかかるようであれば、取り下げた方が精神衛生上もすっきりすることでしょう。

 今回の申請では、現地確認のための写真や書類の作成、境界画定のための作業などの指示が審査に入る前に五月雨式にあり、何度も現地に赴く必要があったそうですね。

 国庫に帰属できるのは純粋に土地のみです。例えば地上にある水道栓は撤去する必要がありますが、撤去は審査に入るための要件に過ぎません。地中のものも同様ですが、地中に埋まっている水道管はほかの造成地所有者との兼ね合いで撤去できない場合も多く、破裂などのトラブルがあれば管理責任を負うこととなります。これでは何のための国庫帰属か分かりません。また、土地であっても相続していない人との共有地は現状では国庫帰属制度の対象とならない点にも注意が必要です。

 新しい制度で運用が定まっていないことを差し引いても、次から次に指示があって対応するのに手間や費用がかかるとなれば不信感も生まれてくるでしょう。次は何を言われるのか不安な思いでいるぐらいなら、取り下げた方がいいとのお気持ちはよく理解できます。

 生活の窓口では相続不動産の処分に関するご相談も承っています。<生活の窓口相談員(統括マネジャー)山本建>