金への投資 年金生活者に適する?

 インフレの現状や長生きに備えて資産運用の必要性を感じるものの、何から始めればよいかわかりません。金はインフレに強く、リスクも低い投資商品と勧められましたが、年金生活者の投資方法として適していますか。(60代、女性)

配当金などの定期収入得られず

 金投資は、戦争など有事に強く無価値になる可能性が低い投資法と言われています。インフレの状態で価値が下がる紙幣と異なり、金は物価と共に価値が上昇するため、インフレにも強い運用方法として興味を持つ人が多いです。また、株式や投資信託と比べて価格の変動も緩やかなことから安定運用に適しています。余生で使う予定のない資産の長期にわたる置き場所としては、金投資は有効な方法と言えるでしょう。

 しかし年金生活者であるあなたには不向きな側面もあります。まず金投資では配当金や利息が得られません。年金収入と生活支出の不足分を補う投資方法ではないのです。

 次に現物の金地金の購入や売却は一般的に手数料が高く、購入額の10%以上になることも珍しくありません。さらに盗難のリスクから現物を安全に保管するための手数料も必要です。投資額に対する手数料の高さには注意しましょう。

 なお、金投資は新NISA制度の対象ではなく、NISA口座を活用した非課税での運用ができません。資産運用では、目的や許容できるリスクを考慮するより、どの商品や方法を選択するかを考えましょう。年金収入の不足分を補う定期収入を得たいなら、債券投資の利息や株の配当、投資信託の分配金が選択肢です。中でも元本の値下がりリスクを抑えるなら債券投資がよいでしょう。

 10年以上将来のために資産をふやすなら、NISA口座での投資信託の積み立て買い付けによりリスクを分散した非課税の運用ができます。生活の窓口では、資産運用のご相談を承っています。<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)平田純子>