家の売却 隣の屋根や電線が越境
叔父が老人ホームに入居したら、叔父の家を売却する予定です。家の外観を観察すると、隣家の瓦屋根が越境し、敷地内上空を電線が通過しています。今のうちからできることはありますか。(70代、男性)
紛争を回避 丁寧に工事の交渉を
越境されている部分が見つかるとスムーズに不動産を売却できない可能性があります。越境に気付きながらも物申すことなく何ら対応しない叔父様のお人よしな性格が災いして、後に紛争が起きる火種になります。悪意のない隣人の占有を放置して10年経過すると叔父様の土地所有権を隣人に取得されてしまう可能性があるため、もめないように是正しましょう。
土地家屋調査士に境界確定測量を依頼して境界位置を確認することが先決です。故意または過失があるかに関わらず隣家の瓦屋根が越境していれば、叔父様の土地所有権を侵害しています。早急に隣家内側に瓦屋根をおさめるなどの工事をお願いしましょう。工事代金は隣家が負担すべきですが、数十年間放置した叔父様にも非があるため、代金の一部を負担するといった歩み寄りの態度で折り合いをつけましょう。
敷地内上空を隣家への引き込み電線が通過している場合も越境物に当たります。敷地の上空にも叔父様の所有権が及ぶため、土地所有権を侵害しています。叔父様はよくても、買い主は事前の解決を要求するでしょう。
電線は電力会社に、通信線はNTTやケーブルテレビなどに連絡して移設してもらいます。電柱を増設して、道路から隣家の敷地まで迂回(うかい)させる等の方法があります。ただし、工事には隣家の同意が必要な場合が多く、手間取ることも容易に想像できます。越境問題の解消に時間を要すると、自宅売却の機会を逸するため、お互いのメリットを丁寧に説明して上手に隣人と交渉しましょう。<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)長沼満美愛>