自宅など財産を法人に遺贈したい

 婚姻歴のない独り身で、現在は施設にお世話になっています。自宅をはじめ、保有する財産を、相続人である兄弟姉妹ではなく、法人や施設に寄付したいと考えています。遺言書にその旨を書けばよいでしょうか。(80代、女性)

課税の有無調べ事前に相談必要

 あなたが財産を法人などに寄付(遺贈)したい場合、遺言書の作成が必須です。兄弟姉妹には遺留分がないため、全資産を遺贈しても差し支えありません。遺贈には、具体的な財産を指定する特定遺贈と、財産に対する割合を指定する包括遺贈があり、いずれも注意が必要です。

 最初に確認すべきは、遺贈の受け手である法人へ課される税は法人税であり、原則として相続税ではありません。

 特定遺贈の注意点として、通常の相続と異なり、贈った側に納税義務が生じうることが挙げられます。遺贈した不動産などは相続開始時の時価で譲渡されたとみなされ、譲渡益がある場合、相続人に譲渡所得税について準確定申告の義務があり、兄弟姉妹に負担をかけてしまいます。

 包括遺贈の場合、さらに注意が必要です。包括遺贈では負の財産も遺贈されるため、受遺者である法人も、遺産分割協議に参加する必要があり、この負担を嫌って包括遺贈を望まない法人も少なくありません。

 なお、遺贈先が公益法人やNPO法人であれば、法人税の対象とならず、みなし譲渡課税も非課税となる特例があります。ただし、遺贈された不動産の利用が公益目的に限られるなど適用要件は厳格で、法人から遺贈を断られるケースが多いです。

 一般的に法人への遺贈は生命保険の活用が有効です。不動産等の遺贈については、税理士のサポートを受け課税の有無を調査するとともに、相続人や遺贈先とも相談するなど、事前の準備が欠かせません。生活の窓口では、遺贈や相続に関するご相談も承っています。<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)平田純子>