妻へ残す自宅 長男が遺留分を要求

 相続財産が自宅しかなく妻のために財産放棄を子2人に打診したところ、長男は遺留分相当額の先渡しを条件に出してきました。渡せる現金が無くても、妻が自宅に住み続けられる方策はありますか。(70代、男性)

配偶者居住権を遺贈する遺言を

 ご自宅の写真を拝見したところ、草花の手入れが行き届いた広い庭付きの戸建てで夫婦仲良く心豊かに暮らしておられる姿を想像します。土地の相続税評価が高額になると予想できるため、長男の相続期待は膨らんでいるようですね。遺留分相当額の先渡しを要求されますと、「争族」の不安がよぎりますが、生前対策のきっかけだと割り切りましょう。

 あなた亡き後に現金が残っていなければ、長男は自宅売却により金銭に換えて遺産を分割したいと言うかもしれません。土地の切り売りも方策の一つですが、庭の手入れが趣味の妻にはつらいでしょう。それであれば、土地と建物を含めた配偶者居住権を配偶者に遺贈する内容の遺言を作成することが最善です。

 長男と長女が実家の所有権を共有で相続したとしても、妻は今まで通り継続して住めます。長女を遺言執行者に指定しておくと妻の委任を受けて配偶者居住権の設定登記手続きをしてくれます。

 同時に、配偶者居住権の死因贈与契約を妻と締結しておきましょう。死因贈与契約の執行者も長女に定めます。配偶者居住権の仮登記を法務局に生前に申請しておけば、あなた亡き後は妻の委任を受けて長女が本登記の手続きをしてくれます。これで長男が持ち分を売却しても、新しく所有者となった第三者からの立ち退き要求に対抗できます。所有権を子2人で共有する事態は本来避けたいのですが、相続財産に現金が無い以上、遺留分侵害請求されないことを優先する苦肉の策です。

 生活の窓口では、相続のご相談も承っております。<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)長沼満美愛>