施設入居 嫁が自宅売却に同意せず

 老老介護の限界を感じて老人ホームに夫婦で入居検討中です。費用に充てるため自宅を売却したいのですが、長男が早くに亡くなり、自宅(建物)の共有持ち分を相続した嫁から同意が得られず、悩んでいます。(80代、男性)

総合的な資産承継を考え対話を

 あなたが所有する土地に長男と費用を出し合って建てた2世帯住宅の所有権を共有していたんですね。長男さんが早世したため、お嫁さんと自宅を共有されているとのこと。複雑な事情の中で、穏やかな生活を望むお気持ちを拝察いたします。

 まず施設入居の際、自宅の売却が必要かどうか考えます。現在、年金や現預金にある程度の余裕があるため、売却せずに入居が可能な施設を探すことも選択肢に入ると思います。検討エリアを郊外に広げてみたり、交通の便を少し譲歩したりすることで費用面を安く抑えられます。

 次に売却するか否かに関わらず、お嫁さんとの関係を悪化させずに話を進める対応として、相続を含めた総合的な資産承継を考えます。

 例えば、現預金の全てを妻が相続し、自宅(建物)の持ち分の全てをお嫁さんに遺贈する内容の遺言を準備すれば、お嫁さんに安心感を与える一助となるでしょう。一方、東京都内にあるご自宅をお嫁さんが一人で相続すればかなりの税金負担が生じます。資力のないお嫁さんに説明すれば、現段階で売却することに納得するかもしれません。お嫁さんには持ち分相当の金銭が支払われますし、ほかにお子さんのいないあなたや妻が亡くなった後の財産を遺贈すると伝えておけば、なお良いでしょう。

 あなたが若ければ、持ち分売却や賃貸借などの選択肢がありましたが、現在は妻と残り人生を穏やかに過ごすことが何よりの幸せですね。ストレスから解放され、資産を生かしながら、夫婦仲良く施設で暮らすことを優先した最善策であると考えます。<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)長沼満美愛>