賃貸物件を死後は妻、長女の順に

 2人の子供がいますが、認知症の妻の世話を長女がサポートしてくれています。私の所有する賃貸物件について、私の死後、家賃収入は妻の生活費に充てられるよう、その後は長女に相続してほしいと希望しています。(70代、男性)

家族信託で受益者を続けて指定

 家族で過ごす長い人生には、幸せなことやつらいことなど実にさまざまな事態が起こります。特に闘病や介護といったつらい時期を経ると、親が子供に抱く思い、その逆も個人差がうまれることは、あなたの家族に限ったことではありません。

 財産の残し方や思いを伝える方法として遺言書が代表的ですが、2次相続への思いを実現することは基本的に不可能です。2次相続に至るまでのご自身の思いが明確にある場合、家族信託の活用が望ましい解決策となります。

 家族信託とは本人が自らの財産管理、処分をお願いする受託者と、その受益者を指定して託す財産管理手法で、委託者と受託者間で契約を締結します。よく混同されますが、信託銀行の「遺言信託」とは異なります。

 遺言だと自分の後の財産所有者を決めることはできますが、その次の相続における所有者を決めることはできません。一方、家族信託では、自分の死後の受益者を続けて指定することができるので便利です。これを「後継ぎ遺贈型受益者連続信託」と言います。

 今回のケースでは、あらかじめ長女を受託者に指定しておくとよいでしょう。受益者は、契約当初はあなた、あなたが亡くなった後は妻、その後は長女と指定しておけば最終的に長女が所有することになります。

 日本では、65歳以上の5人に1人が認知症になる時代です。認知症対策として家族信託を早めに検討してみてはいかがでしょうか。

 たのシニア生活彩り倶楽部では、家族信託に関するご相談を承っています。<たのシニア生活彩り倶楽部アドバイザー(ファイナンシャルプランナー)平田純子>