思い出などを文章に残して記録する「自分史づくり」を行うシニアが増えている。これまでの人生を振り返り、出来事などを一度棚卸しすることで、今後の人生の目標を見つけるのに役立つからだそうだ。

 自分史をつくる過程は、認知症の治療・進行を予防する「回想法」につながる。昔を思い出し、話したり書いたりすることで脳が活性化する効果があるとされている。心理療法にもなり、昔懐かしい写真などを見ることで、心の落ち着き、満足感、自己肯定感や不安感、孤独感の緩和、過去に得た「自信」の回復などが見込まれる。

 元銀行支店長の鎌野雄三郎さん(80)=神奈川県平塚市=も自分史づくりに挑戦した一人だ。昨年末に病気をしたこともあり、「今残しておかなければ」と発奮。自分史には銀行員当時の同僚や先輩ら多くの名前が登場し、回想法を体現している。

 書名は「我が人生」と名付け、自分史づくりに取り組むきっかけを与えてくれた銀行員時代の部下、小金郁三さん(68)=同県開成町=らに送った。鎌野さんは2年前に小金さんから届けられた自分史を手にしたことで刺激を受け、自身の制作につながったという。

 鎌野さんと小金さんは、お互いの自分史を手に平塚市内で25年ぶりに再会を果たし、昔話に花を咲かせた。その際、近いうちに銀行の同窓会を開く構想も生まれた。自分史づくりを通じて、生き生きとした日々を送ることは健康寿命を延ばすことにも一役買っている。(毎日文化センター講師・藤田昌平)