遺言書には大きく分けて「自筆証書遺言書」「公正証書遺言書」「秘密証書遺言書」の3種類があります。

 自筆証書遺言書は、遺言書の本文、日付、氏名を自らが書き、押印して作成します。思い立ったらいつでも作成でき、費用も掛からないため一番手軽な方式です。本文は自書の必要がありますが、財産目録は代筆やパソコンでの作成、資料の添付でも代用できます。自分一人で作成できるので、遺言内容を秘密にしておけるというメリットがある半面、法的要件不備で無効となる危険性があります。また、過去には、紛失、偽造、隠匿や相続人に発見されないといった問題がありましたが、2020年に法務局での自筆証書遺言書保管制度が開始されて以降、制度を利用すれば、これらの問題は解消が可能となりました。なお、制度を利用すれば、相続発生時の家庭裁判所での遺言書の検認は不要ですが、利用しない場合は検認が必要です。

 公正証書遺言書は、公証人に作成してもらい、原本を公証役場で保管してもらう方式です。本人と証人2人で公証役場に行き、本人が遺言内容を口述し、それを公証人が記述します。作成と保管を公証人が行ってくれるので、法的に安全で確実な遺言書を準備でき、相続発生後の紛争防止にも効果的な方法と言えます。ただし、作成には費用が掛かること、証人の立ち合いが必要なことから、遺言内容を自分だけの秘密にすることができません。相続発生時の家庭裁判所の検認は不要です。

 秘密証書遺言書は、遺言者が任意の用紙に記載(パソコンや代筆も可)、自署、押印をした上で封印し公証役場に持ち込み、公証人および2人以上の証人で封紙に署名、押印をします。その後、遺言書そのものは本人保管ですが、公証役場には遺言書を作成したという記録が残ります。偽造、隠匿の防止になり、遺言書の存在を遺族に知らせておける上、遺言内容を秘密にしておけるというメリットがあります。一方、本人保管であるがゆえに紛失のリスクは残ります。そして、遺言書内容のチェックをうけることができないので、法的不備で遺言書が無効となる危険性もあります。また、費用が発生する点、家庭裁判所での検認が必要となる点にも注意が必要です。なお、秘密証書遺言書は、現在、ほとんど利用されていません。

<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)平田純子>