自筆証書遺言書は、公正証書遺言書などと比較して手軽さやコストの面でメリットがあります。一方、紛失や改ざん、遺言書が相続人に発見されない、方式不備で無効になる恐れなどのデメリットがあります。そのデメリットを解消するために「法務局による保管制度」ができました。制度を利用した遺言書は家庭裁判所の検認が不要となる点もメリットになります。
遺言者は、自筆証書遺言書を作成した上で法務局に予約を取り、予約した日に遺言者本人が出頭して保管申請をします。申請時に必要な申請書の様式は、法務局ホームページからダウンロードができるので、パソコンで入力して印刷、または印刷して手書きで作成しても構いません。もちろん、最寄りの法務局窓口でも入手可能です。申請には本籍と戸籍の筆頭者の記載のある住民票の写し、顔写真付きの官公署発行の身分証明書、手数料(3900円分の収入印紙)が必要です。
申請は、遺言者の住所地▽遺言者の本籍地▽遺言者の保有する不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局で行えるので、利用しやすい法務局を選択できます。遺言者の生存中は、遺言者のみが遺言書保管法務局に出向き、遺言書の閲覧が可能です。遺言者自身が遺言書保管の撤回を申請することもできます。
また、遺言者が亡くなったことを法務局が把握した時に、遺言者が指定した通知対象者に対し、遺言書を保管している旨の通知をします。通知対象者として指定できるのは、受贈者、遺言執行者、推定相続人などで1人に限ります。遺言書が保管されていることを一番早く、確実に伝えたいと考える方を指定することが望ましいです。
相続発生後、受贈者や相続人は遺言書保管所として指定されている法務局ならどこでも遺言書の写しの交付・閲覧を請求できます。
このように、とてもメリットが多い保管制度ですが、法務局では申請時に遺言書の方式不備がないかの確認はしてくれますが、遺言書が法的に有効か無効かの判断や内容の確認はしてくれないので注意が必要です。
<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)平田純子>