相続と贈与はいずれも、財産を誰かに与えることを言います。最も大きな違いは、その「タイミング」で、相続は財産を与える人が亡くなった時に発生しますが、贈与は財産を与える人が存命中の任意のタイミングで行うことができます。タイミングを選ぶことができない相続に比べ、贈与は与える人ともらう人双方の望むタイミングで、何度でも実施することが可能です。

 ただし、たとえ家族・親族間のやりとりであっても、相続や贈与で財産をもらった人は、相続税、贈与税の税金を払わなければなりません。それぞれ非課税の範囲(基礎控除)があり、相続税は亡くなった人が所有していたすべての財産に対して、3000万円+600万円×法定相続人の人数で算出された額までです。贈与税は財産をもらった人単位で年間110万円までが非課税です。

 税金額を算出する税率は贈与税の方が相続税より高い点に注意が必要です。例えば、課税価格1000万円の場合、相続税率は10%ですが、贈与税率は一般税率で40%(特例税率で30%)といった具合です。

 一方、贈与には、もらう(与える)目的を限定することで大きな非課税制度が利用できるケースがあります。祖父母などからの教育資金の一括贈与(1500万円まで非課税)や父母などからの結婚子育て資金の一括贈与(1000万円まで非課税)、父母や祖父母などからの住宅取得等資金の贈与(省エネ等住宅で1000万円まで非課税)などです。いずれの制度も、制度利用の要件や適用期限、資金援助を受ける人の年収制限等が詳細に設定されていますので、利用を検討したい場合は国税庁のホームページなどで確認しましょう。

 また、相続においても、居住用または事業用の不動産に対して、小規模宅地等の特例といって、要件に該当すれば、土地の課税価格を大きく減額でき、相続税の負担が軽減できるケースもあります。

 相続で、財産の所有者が希望する通りの内容で財産を与えるためには、事前に遺言書の準備が欠かせません。贈与では、遺言書のような事前準備は特に必要ありませんが、実施した際は、「与えた・もらった」の贈与契約書を交わしておく必要があります。

<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)平田純子>