扶養とは、家族や親族に対して経済的な援助を行うことをいい、援助している人を「扶養者」、援助を受けている人を「被扶養者」と呼びます。
扶養には、「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」の2種類があり、それぞれ独立していて、別々に手続きを行う必要があります。該当する親族を両方の扶養に入れることや、どちらか一方のみの扶養に入れることも可能です。同居、別居の親族とも要件に該当すれば扶養に入れることができます。
今回は、税法上の扶養に親を入れる場合について説明します。扶養者の収入から控除が受けられ、所得税と住民税の納税額が下がるので扶養者にとってメリットがあります。扶養者の職業は会社員、自営業者のどちらでも構いません。扶養に入れることができる親とは、下記の要件がすべてにあてはまる人です。
▽扶養者と生計を一にしている。
▽年間の合計所得金額が48万円以下(2019年分以前は38万円以下)である(65歳以上で公的年金収入のみの場合は年金額が158万円以下)。
▽青色申告者の事業専従者として、その年を通じて一度も給与の支払いを受けていない、または、白色申告者の事業専従者ではない。
生計を一にしているとは、同じお財布で生活していることをいい、別居の場合でも、扶養者が被扶養者に生活費や療養費等、定期的に仕送りをして経済的に支えていればみなされます。
同居の親を扶養に入れた場合の所得税の控除額は、親が69歳以下で38万円、70歳以上同居で58万円、同居以外は48万円です。住民税の控除額は、69歳以下で33万円、70歳以上同居で45万円、70歳以上同居以外は38万円です。例えば、所得税率10%の人が、同居の70歳以上の親を扶養に入れると、所得税は58000円、住民税は45000円の税金の負担が軽減できます。
一方、税負担でメリットがある半面、親の介護保険料が上がってしまう可能性があります。また、親が介護サービスを受けている場合は、その自己負担額の上限が上がり、負担利用料が上がってしまいます。高額療養費制度の自己負担額も上がってしまう可能性があるので慎重に検討する必要があります。
扶養者が給与所得者の場合、年末調整の際に勤務先に提出する「扶養控除等申告書」の扶養親族欄に親の名前や住所などを記入して提出すれば、控除が適用された税額で計算されます。
<生活の窓口相談員(ファイナンシャルプランナー)平田純子>