古来、夕暮れの美しさが際立つ、稲村ケ崎から七里ケ浜の浜辺はこの季節も実に見事な景観が広がる。国道134号。江の島と富士山が、夕景に静かに浮かび上がり、緩やかな海面がその荘厳さをたたえている。

 休日は鎌倉に足を延ばすことが多くなった。いまだ知らぬ路地や店を探索しながら、鎌倉らしい空気を求めて、ゆるゆると散策する時間が好ましい。

 年末近いこの時期、小町通りや御成通りは、冷たい風に吹かれながらも若者らが多くかっぽする。小春日和であれば、陽光を全身で感じながら1、2時間は歩く。「勝手知ったる街」と友人らには自慢めいた物言いをすることもあるが、実は知らない場所が多い。二階堂あたりは、いわゆる「名所・鎌倉」の穏やかな景色に包まれ、足を延ばしたかいをしっかりと感じさせてくれる。

 そして。

 日の傾きを見ながら、午後4時ごろには海辺に向かえるよう足早になる。車に乗り込み30分。目当ての光景に出合える。国道を流れる車のテールライトが休日の終わりをその場にいる全員に告げている。

 満たされた鎌倉散策の終演だ。【さ】