フィンセント・ファン・ゴッホは、日本でも多くのファンがいる画家の一人だ。
ゴッホの展覧会は、開かれると長蛇の列ができ、ルノワールやセザンヌ、ピカソらと並ぶ人気だ。
先日まで東京・上野の東京都美術館で開かれていた「ゴッホ展」に足を運んだ。落ち着いているとはいえコロナ禍での開催。予約制で時間を区切って入場制限をしていたが、美術館はやはり混雑していた。絵画の前では二重、三重の人垣が。ゆっくりと鑑賞するには、やや困難な状況で、人気画家の展覧会らしいといえばその通りである。
激しいタッチで絵の具が置かれたカンバスに見入る。37歳で自ら命を絶つまでのおよそ10年間が、ゴッホの作画期間だ。今で言えば「『生きづらい』人生」を歩みながら、試行錯誤を重ね絵画に没頭する生き方を貫いた。描いた作品に込められた情念。見る者にストレートに伝わってくる作風が私たちを魅了する。中でも最晩年に描かれた油絵はすさまじい。
絵画は、作品を見て感じることが何より大事で、細かい解説は二の次で良いと、私は思う。見た瞬間に「いいな」と感じることだ。数多くの絵が展示されていても、すべての作品を「いいな」と思えないのは当然と言える。1点、あるいは2、3点に引きつけられれば十分ではないか、とさえ思う。
自らの感覚や感性を深めるには、本物の作品をたくさん見ることだ。画集や写真ではない「本物の作品」に触れること。もちろん機会は限られるけれど、チャンスがあれば万難を排して見に行き、そして、感じることだ、と思う。
ゴッホの絵を見て、改めてその意を強くした。【さ】