3月に入り、やっと寒さから解放されつつあるのがありがたい。今年は予想以上に寒さが厳しかった印象だ。と、昔はどうだったかが気になる。最近、夏の暑さも子供だったころと比較するが、これは圧倒的に今のほうが暑いと結論づける。冬場の寒さはどうか。こちらは、あまり変わらないのではないかと感じるのだが、いかがだろう。
半世紀ほど前、今よりも暖房器具が進化しておらず、石油ストーブが暖を取るメインの機器だった。学校もエアコンなんぞはなかったから、大きな石油ストーブが教室の前の方に設置され、休み時間になると周囲に子供が集まって暖を取っていた。灯油のにおいが教室に流れていた真冬の学校の情景が今も目に浮かぶ。
今はエアコン設置も当たり前になり、夏も冬も以前に比べると快適な教室になっている。特に夏場は雲泥の差だ。「夏は暑いのが当たり前だ」と精神論をぶつ先生がいて、生徒も汗を流しながら机に向かっていた。涼しさに憧れつつも、我慢していたのは社会環境のせいであった。35度を超えるような激暑はほとんどなかったから耐えられたのであろう。
夏も冬も、生活環境は人が過ごしやすくなるように変化して、以前の生活を知っているご高齢の方の中には「身体に耐性がなくなるのではないか」と心配する人もいる。寒さに耐え、暑さをしのぎ、その厳しい季節がやっと終わることを心待ちにしていた、かつての生活は、古代から続く、人間が持つ季節に合わせた身体サイクルをまだ引き継いでいた。
「耐性がなくなるのではないか」と心配する声は、実は人が生活の快適さを追い求めた結果、環境問題を含めた「地球の耐性」が危ぶまれる事態になっているという指摘そのものではないかと思うのだ。【さ】