教育現場が危ういという。教師がクラブ活動や次の授業に向けた準備などで夜遅くまでの勤務が続いて体調を崩し、退職、休職をするケースが相次いでいるらしい。その結果、教師不足となり、自習授業が長期間続く事態が起きているのだ。先日、テレビのドキュメント番組で放送され、おもわず画面にくぎ付けになった。

 番組は、苦悩する中学生から寄せられた「国語と美術の授業が数カ月間自習」との声をきっかけに取材を開始した。ストレスが原因の適応障害で公立高校を1年ほどで退職した新卒の元教師の多忙な一日の紹介や、規定の残業時間を超えると産業医面談の対象になるために学校側が違法と分かりながら勤務記録を改ざんしている実態、減少する教員採用受験者数の統計などから問題点を浮き彫りにしていた。

 一方、改革を進める学校側の取り組みのリポートが目を引いた。神奈川県内の公立中学校で校長が自ら代理教師を探して73歳の恩師に協力を依頼。恩師は教壇を去ってから10年以上が経過しており、自身が通用するか不安があったが、「(授業を)おもしろく工夫すればついてきてくれるかなって」と承諾した。現役の時に使用していた手作りの教材を持ち出して、2カ月間歴史の授業を受け持ったという。当時を回想した恩師のインタビューは、やり終えた達成感と自信で笑みに満ちていた。

 健康寿命が延び続けており、シニアはリタイア後の日々をどのように有意義に過ごせばいいのか苦慮している。今回の恩師のように経験豊かなシニアは、世の中に多く存在するはずだ。その能力を発揮できる環境を整えた再活躍の場があれば、シニアの人生も潤っていくのではないか。ドキュメント番組を見ながら考えさせられた。【ひ】