ロシア軍が侵攻する前のキーウの独立広場(中央)=2022年2月15日、真野森作撮影

 青空の下、緑色のパプリカやブロッコリー、真っ赤なトマト、タマネギ、アンズなど新鮮な野菜、果物がたくさん店頭に並ぶ。訪れた買い物客が店員と会話を楽しみながら品定めをしている。ロシア軍が侵攻する前の2019年にウクライナの首都・キーウ(キエフ)で開かれていた朝市の様子で、街並みを紹介するテレビ番組の再放送映像だ。

 店の男性は「どれもおいしいよ。午前3時に起きて100キロ先の村の畑で収穫してきたんだ」と自信たっぷり。男性客は「農家の直売だから毎週きている」と話し、購入したアンズとパプリカを見せて笑みをこぼした。店にはひっきりなしに客が訪れ、のどかな時間が流れていた。

 映像は続いて、公園の巨大なアーチのモニュメントや11世紀に建設された世界遺産の聖ソフィア大聖堂、記念塔が建つ独立広場、ブルーの外壁が目を引く聖ミハイル黄金ドーム修道院などの名所を紹介。野原から摘んできたという大きなヒマワリ、かれんなカモミールなどのブーケを歩道で販売する女性グループや、オートバイのサイドカーに彼女が乗り込みさっそうと走り出すカップル、公園で伝統弦楽器のバンドゥーラを弾きながら歌う男性らが登場して、平穏な日常が映し出されていた。侵攻後の様子も紹介され、独立広場には戦車を防ぐバリケード、修道院にはロシア軍の戦車の残骸が置かれたという。

 ウクライナ東部地方などの都市は、ロシア軍の頻繁なミサイル攻撃で壊滅状態だ。街の景色は一変し、死者も多数出て住民の心に大きな傷を残した。平和で安全な日常風景が戻るのは、いつになるのだろうか。計り知れない多くの時間がかかるのは間違いない。

 また、映像に登場した野菜、果物店の男性や花店の女性、街を散歩していた親子連れ、カップルらは、今どうしているのだろうか。無事でいてくれることを願わずにいられない。【ひ】