子供のころに住んでいた家は、庭にいくつもの果樹があった。ビワやクリ、ザクロ、柿のほか、果樹ではないがイチゴや時にはスイカも育てていたことを思い出す。つまり季節ごとの果物があったわけだ。父親が好きだったのであろう、それなりに手入れをして、時季になると、もいだり摘んだりしていた。私も食べごろを見計らって、勝手に食べていた。いま思えば、なかなか豊かな時間だった。「旬」という言葉を知ったのも、この庭の果樹からだった。
夏から秋は、野菜とともに果物も豊富だ。いまの時期は柿の赤みが目にうれしい。平地での紅葉も盛んになり、冬の入り口に差し掛かる。7日は「立冬」だった。二十四節気のひとつで、そろそろ寒さを感じ始める。朝晩は結構寒い。そんな朝、ご近所の庭にたわわに実る柿の木を眺めるのが好きだ。深いオレンジ色、朱色に近い柿の実が、青空に映える。良い一日が始まりそうな、そんな気分にさせられる。【さ】