若者に人気がある対戦型ゲームで勝敗を競うeスポーツに、日本で初めて65歳以上のシニア選手で構成するチームが秋田市に誕生した。賞金を稼ぐプロを目指して、「孫にも一目置かれる存在」をキャッチフレーズに日々練習を積んでいる。eスポーツ界に新風を巻き起こすことが期待されている。

勢ぞろいした「マタギスナイパーズ」の選手ら

 地元秋田市のIT企業「エスツー」(須藤晃平社長)が、65歳以上が総人口に占める高齢化率の高い秋田県のイメージをプラスに発信しようと、チーム結成を企画。6月から8月にかけて65歳以上で県内在住者を対象に選手を募集。男女21人の応募があったがゲームをする際のパソコン操作が難しいなどを理由に辞退者が出て、最終的に65歳から73歳の男女計12人で3チームを編成した。9月に開いた発足会見では仕事を退職後に次の人生の目標を模索していて応募したという女性や白髪の男性らがおそろいのデザインTシャツを着て出席。「ゲームを通じて羽ばたき元気になればいい」と意気込みを語った。

 チームは同県にある狩猟のマタギ文化をヒントに「マタギスナイパーズ」と命名した。パソコン操作は左手でキーボード、右手でマウスを同時に動かすなど高度な技術が必要。秋田市内でチームごとに週1回、全体で月1回、2種のシューティングゲームの練習にコーチ指導の下、取り組んでいる。最初はパソコン操作もままならなかった選手も、今では声に出して自分が進む方向などを具体的にメンバーに伝える連係練習で戦略を練っている。また、自主練習にも余念がなく、多い選手は週3回ほどこなしている。選手の家族からは「ここまで一生懸命やるとは」と驚きの声が上がっているという。

練習に取り組む選手ら

 現在はまだ大会に出場していないが、来春を目標に全国の賞金大会に足を運び、得た賞金は選手への還元や活動費などに充てる。チームのロゴマークがデザインされたTシャツの通信販売を実施しているほか、大会に向けてユニホームを製作する予定もあるという。

 チーム結成に中心的にかかわったエスツー総務部長の緒方無双さん(53)は「チームは、シニアになってもこんな過ごし方があるという選択肢の一つとして『ビー・ア・チョイス』を合言葉に頑張っている。若い人たちにも共感してもらえればうれしい」と話している。【関根浩一】