年齢が80歳代のパーソナリティー、スタッフが中心となり制作し、毎回同世代のゲストが出演するラジオ番組が注目されている。昨年8月に始まったFMヨコハマの毎週火曜日午前5時15分から30分間放送されている「Grand Senior Salon(グランド・シニア・サロン)」だ。「人生百年時代の、グランドシニアによる、グランドシニアのためのトーク番組」をコンセプトに制作している。
パーソナリティーを務めるのは、元毎日放送アナウンサーでジャーナリスト兼作家の小林昌彦さん(88)。小林さんは同志社大卒業後、同放送に入社。米国イリノイ大留学などを経て、朝の番組キャスターとして、関西の財界人のインタビューを担当した。ニューヨーク・ワシントン特派員などを務めた後、44歳で早期退職して家業のビル賃貸業を継いだ。
制作スタッフの中心となるのは、小林さんと大学が同窓で元テレビ神奈川に勤務していたラジオ・テレビプロデューサーの寒河江(さかえ)正さん(88)。約20年前の大学同窓会で小林さんと知り合い、それから10年後に国際・社会情勢を学ぶ勉強会で再会し、友人関係が続いている。
番組は、一昨年に寒河江さんが後輩のラジオディレクターから新番組の相談を受けたことがきっかけで、「キャスター経験もあり、博学で感性のバランスがある」小林さんに白羽の矢を立て出演を交渉。小林さんからシニア向けの番組が提案されて実現した。
ゲストは小林さんが毎日放送時代に培った人脈などで出演依頼。現在はコロナ禍のため、電話インタビューで収録しているが、これまで、落語家の三遊亭遊三さんやタレントの高木ブーさん、料理人の道場六三郎さん、登山家の三浦雄一郎さん、元国連事務総長特別代表の明石康さん、早稲田大名誉教授の吉村作治さん、薬師寺長老の山田法胤(ほういん)さんら、国内外で活躍する著名人が登場している。
番組の冒頭は、グリーグ作曲ペール・ギュント組曲の「朝」が流れる中、「グランド・シニア・サロンのマスター、小林です」の優しい語り口でスタート。ゲストの知られている事実以外の面にも焦点を当てることを念頭にインタビューしているという。そのために、事前準備に余念がなく、出演者の著書を読むなどして収録に臨んでおり、印象に残った言葉や仕事にまつわる話、健康の秘訣(ひけつ)などを質問し、そのやりとりからゲストの人となりも巧みに引き出している。
また、インタビューの合間には、ゲストが選んだシャンソンやクラシックなどの曲を流す趣向を凝らしている。放送回数を重ねるごとにリスナーからの反響も増え、「昭和、平成、令和の時代を支え、ご活躍しているゲストの話を聴けることは、すばらしく、毎回感激している」「これからの80代をどう生きるか、いいヒントを与えてくれる番組」などの感想が寄せられているという。
小林さんは「リスナーが届けてくれるはがきなどを読むと、ありがたくやめられない。体力のある限り続けたい」。将来は「グランド・シニア・サロンのフラッグをつくり、コーヒーショップのテーブルなどに立てることで、その場が気軽に会話を楽しむコミュニティーとなればうれしい」と大きなプランを練っている。【関根浩一】