「一日シニア大学」には多くの受講者が集まった

 シニアが関心のあるテーマを専門家が講義する「たのシニアフェス 一日シニア大学」(毎日新聞社の生活の窓口、たのシニアウェブ主催)が25日、東京都渋谷区の実践女子大学渋谷キャンパスで開かれた。講義は4時限目まであり、オンラインでも実施し、50~60代を中心に計300人が受講した。家屋の相続問題やがん治療とお金、認知症などテーマごとに30~45分間の講義に熱心に聴き入った。

 1時限目は一般社団法人高齢者住宅協会理事の吉田肇さん(61)が、家屋の相続から老朽家屋の利活用を解説。親の生前相続では少額の住宅資産でも子供間のトラブルが多いことが紹介された。実家対策では、高齢者が住み続ける場合の視点について、地域の介護医療、訪問サービスの充足度、頼りになる人の有無などポイントを伝えた。「元気な時に自宅をどのようにしたいのかを家族に伝えておくことが大切です」と訴えた。

吉田肇さん

 昼食を挟んだ2時限目は、2級ファイナンシャルプランニング技能士の望月大輔さん(40)と坂本裕孝さん(45)が「がん治療とお金」について講義。望月さんは日本の平均・健康寿命やがん発症、死亡者数の割合、生涯医療費などを説明し、これからの取り組みとして病気にかからないために生活習慣の改善、がん検診の受診、自在性のあるお金の準備を挙げた。坂本さんは自分の妻が乳がんに患った闘病の経緯を話し、「がんは治る病気なので、検診して早期発見をすることが大切」と力説した。

望月大輔さん(右)と坂本裕孝さん

 公益財団法人認知症予防財団講師の小山真史さん(58)は、3時限目で認知症について、原因となる脳の病気や発症の際の症状、治療・予防方法、早期発見の目安などを示し、認知症予測テストも実施しながら分かりやすく説明した。

認知症について説明する小山真史さん

 最後の4時限目は、実践女子大学の学生が開発した高齢者の若い頃と現代の若者の暮らし、生活の様子を照らし合わせて読み札、絵札にした多世代交流カルタが披露された。同大学生活科学部4年の輿石茜さん(22)と、いずれも同学部3年の飯嶋咲良さん(21)、鹿内珠衣さん(21)、須賀彩乃さん(21)、藤野このかさん(21)の5人が製作の過程や意義などを紹介。読み札を読んで受講者がスライドに映る絵札を選ぶミニ体験も行われた。5人は「シニアと会話をしながらカルタをすることでシニアの生活に新しい発見がある。ぜひカルタを利用してほしい」とPRしていた。

多世代交流カルタを紹介する実践女子大学の学生

 また、講義を前にコメンテーターのトコさん(63)が「〝わたし〟なりの生き方」と題して基調講演。老後に必要なものは「教育」という「今日行く」ところと、「教養」の「今日用」があるということだと、ダジャレを交えて主張した。そのうえで、頭を使い、体を動かし、見たり聞いたりして楽しんで人生を豊かにする趣味を多く持つことの必要性を説き、「好奇心を忘れずに元気に過ごしてください」とエールを送った。

トコさん

 講義のメモを取っていた東京都大田区の主婦(84)は「主人が昨年がんで亡くなり、もっと病気について知りたくて参加しました。学んだことを家族に伝えていきたい」。夫と受講した神奈川県南足柄市の主婦(78)は「実家対策では自分の部屋の近くにトイレを設置するリフォームで、高齢者施設に入らずに住み続けることができると知りよかった。元気なうちに家族らと話し合っておくことが重要と分かり、とてもためになった」と話していた。【関根浩一】

※一日シニア大学はテーマを変えて今夏にも開催する予定です。詳細は決まり次第お知らせいたします。