高齢者人口の増加に伴う介護職の人手不足を、テクノロジーを駆使して解消するために、保険会社のSOMPOホールディングス(東京都新宿区)と、関連企業のSOMPOケア(同品川区)は、2019年2月からプロジェクト「Future Care Lab in Japan」をスタートし、同区に研究所を開設して機器の検証などを行っている。
日本の総人口に65歳以上が占める割合の高齢化率は上がり続けており、要介護者の増加で、介護現場の人材確保が課題となっている。そのため、研究所は介護スタッフの身体的負担の軽減を図り、介護サービスの質を維持するために、テクノロジーを導入した新たな介護のあり方を創造している。システム開発業者らと機器の活用や課題について協議し、安全性、技術の検証などを行い、SOMPOケアの介護施設で実証実験をしているという。
研究所のフロアには、介護施設のモデルムームをつくり、「食事」「入浴」「排せつ」に関連する機器などを展示している。ベッドを分離し車いすとして利用できる「離床アシストロボット」は、電動でマットレスが中央から分かれ、車いすとして使用できるため、介護スタッフは利用者を抱き上げることなく車いすに乗せることができる。手間が少なく、短時間で分離、合体が可能となり、これまで同様の業務は介護スタッフ2人で行っていたが1人で対応できるようになったという。
また、リクライニングチェアに横になりながら入浴できるドーム型の「シャワー入浴装置」は、ドーム内に設置されたノズルから温度設定できるお湯やボディーソープが自動噴射されて体を洗う。その間に取り付けられている別のシャワーで洗髪も可能で介護効率が上がるという。
おむつの中の排せつ物の臭いをセンサーが検知する「ヘルプパッド」は、要介護者の布団やマットレスに敷いて使用する。専用ソフトが排せつ時間などのデータを記録することで、排せつパターンが分かり、これまで手探りだったおむつ交換のタイミングが予測しやすくなったという。
その他、孤独になりがちな一人暮らしのお年寄りが話しかけると近づいてくるなどコミュニケーションがとれる家族型ロボットや、QRコード、顔写真を確認して服薬ミスを防ぐシステムなども紹介されている。
研究所は「介護福祉士、理学療法士の資格保有者や介護開発会社の出身者らがプロジェクトを組んでいる。開発業者などと製品の対象者の要件や普及方法などを相談しながらオペレーションすることで、高齢者、介護者とも生活の質が向上する」としている。【関根浩一】