高齢者の介護施設などで入所者の脳をトレーニングするための俳句づくりが、レクリエーションとして取り入れられている。俳句の十七音(五七五)の中に季語を盛り込んで季節を意識することなどが、認知症予防に効果があるとされているからだ。
岡山市の特定医療法人に勤務する傍ら、俳人としても活動する折野和己さん(60)=同市=も効果を実感した一人だ。2004年に老人保健施設の副施設長をしていた時に認知症病棟で俳句づくりを入所者に指導。入所すると混乱して病状が進むことがあるが、俳句づくりをしながら四季を感じ取り、日常生活を呼び起こすことなどで症状や精神面が安定していったという。
折野さんは元新聞記者で退職後、韓国の大学院に留学。帰国後の1993年に出版社に入社して、俳句本の編集を担当したのがきっかけで俳句に興味を持った。97年に医療法人関連の社会福祉法人に入り、ケアマネジャーの資格を取得。2002年に句会に初めて参加するなど、本格的に俳句を学び始めてのめり込むようになった。
医療法人の事業部長の時には、法人が経営する岡山市内の病院で患者、その家族、職員らから闘病、リハビリ、介護で感じた思いを五七五で表す「ほほえみ俳句・川柳」の作品募集をプロデュースした。
また、還暦を迎えたのを機に人生の棚卸しをしようと、約20年間学んだ俳句の作品集「俳句、いただきます。」(メタ・ブレーン発行、税込み1760円)を鬼野海渡の俳号で今年3月に自費出版した。約230句を掲載し、作品ができる背景の場面の回想や季語、俳句づくりの重要ポイントなども紹介している。
折野さんは「俳句は普段使わない言葉を探してつくり出すので脳が活性化する。韓国語やスペイン語などでも俳句はつくられており、コミュニケーションのツールになると思っている。日ごろから季語を見つけるために街をゆっくり歩いており、今後はオンラインやコロナが終息したら喫茶店、お好み焼き店などで俳句講座を開いてみたい」と意欲を見せている。【関根浩一】