娘と絶縁状態 財産を社会のために

 長年絶縁状態にある一人娘に法的には相続権があると知り、複雑な思いを抱えています。自分が築いてきた全財産を、何らかのかたちで社会に役立てる良い方策も知りたいです。 (80代、女性)

遺留分に配慮 寄付や遺贈も一案

 長い間、音信不通になっている娘さんに財産が渡ることを懸念されていると伝わってきます。身近な人だからこそ、感情の蓄積があって自分の財産を与えたくないとのご相談をお受けすることは意外と多いです。

 民法においては、戸籍上の親子関係は切れないため、相続権が発生します。さらに、相続人には最低限保障された遺留分という権利があり、基本的には完全に排除できません。

 遺言に一切相続させない旨を明記しても、娘さんが遺留分侵害額請求を行えば、法定相続分の半分に相当する財産を請求できる仕組みがあります。遺言だけで娘さんの権利を排除できません。

 逆に言えば、遺留分以外の財産はご自身の意思によって使い道を決めることができます。生前の思いや価値観を未来へ託す手段として、寄付や遺贈を選ぶ方も増えています。社会貢献や人助けに財産を生かせば、ご自身の生き方の延長線として意義深い遺産の残し方になりますね。

 例えば、公益財団法人「毎日新聞東京社会事業団」では、遺贈・寄付を受け付けて小児がんや難病の子どもたちを支援する団体への助成、国内外の自然災害被災地への援助、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を通じた海外難民の救済、親を亡くした子供達の教育支援などに役立てています。あなたの遺志に沿った活動を行う団体に財産を託すことで社会の貢献が可能です。

 遺留分を侵さないよう配慮すれば、ご自身の遺志を社会貢献に生かすことができます。たのシニア生活彩り倶楽部では遺言に関するご相談も承っています。
<たのシニア生活彩り俱楽部アドバイザー(ファイナンシャルプランナー)長沼満美愛>