株や投資信託 認知症に備えたい

 金融資産の大半を証券会社で運用しています。保有目的が配当収入であるため売却する予定はありませんが、認知症に備えておきたいです。株式や投資信託も家族信託の信託財産にできますか。 (50代、女性)

「家族信託」証券会社で確認と調整

 資産の多くを証券会社で運用している場合、将来的な認知症リスクに備えておくことは重要です、特に、配当収入を目的に長期保有している株式や投資信託などは、たとえ売却の予定がないと考えていても、想定を超える経済的ショックが起きた際に売却の判断ができなくなると、資産が目減りするリスクが高まります。

 こうした状況への備えとして、近年注目されているのが「家族信託」です。家族信託では、株式や投資信託などの金融商品も信託財産として組み入れることができます。委託者であるあなたが認知症を発症しても、あらかじめ家族を受託者としておけば、代わりに管理・運用・処分が可能となり、資産の凍結を防ぐことができます。

 ただし、実務上のハードルも存在します。信託に対応している証券会社は限られており、すべての金融商品を信託口口座に移管できるとも限りません。特に、投資信託は証券会社によって取扱商品が異なるため、事前の確認が不可欠です。

 また、信託契約書は原則として公正証書で作成し、証券会社の規定に沿った内容とする必要があります。スムーズに手続きを進めるには、あらかじめ証券会社に契約内容を照会しながら文案を調整していくことが望ましいでしょう。

 信託口口座は特定口座ではなく一般口座として開設されることが多く、受益者は確定申告を行わなければならない点にも注意が必要です。とはいえ、信頼できる家族に管理を委ねつつ、自身は引き続き配当などの利益を享受できる家族信託は、将来に備える有力な選択肢の一つです。
<たのシニア生活彩り俱楽部アドバイザー(ファイナンシャルプランナー)長沼満美愛>